【未経験からITエンジニア】第一歩:独学だけで合格する基本情報技術者試験
本業はITとは関係のない医療系の技術職の「ううら」です。異分野・未経験・独学・40代と決して良くない条件でも情報処理技術者試験は「ITパスポート試験」「情報セキュリティマネジメント試験」「基本情報技術者試験」「情報処理安全確保支援士試験」に合格しています。
この記事では異分野・未経験からITエンジニアを目指す方を中心に、基本情報技術者試験を受けるメリット、独学での勉強方法を主に記載しています。
・未経験からITエンジニアを目指している方
・情報処理技術者試験を受けようかどうか迷っている方
他の情報処理技術者試験についての記事は下記のページにまとめています。
受験のメリット
特に異分野・未経験でITエンジニアへの転職を考えている場合、非IT企業で経験や知識があっても、IT系の企業でも通用すると証明する事は難しい場合が多いです。
そのため、これまでの知識や経験に対する裏付けとして情報処理技術者試験を使い、非IT企業の経験や知識に加えて国家試験に合格できるだけの基本知識と技術を持っている事を客観的に証明することができます。
また私自身もそうでしたが、独学で身に付けた知識や技術は必要な分野や興味のある分野に偏ることが多いです。情報処理技術者試験は全般的な知識や技術が求められるため、試験を通してITエンジニアとして必要な分野を学習することができます。
メリットに対してデメリットとしては受験料が必要な程度のため、転職までは考えていない場合でも、IT、情報処理に興味のある方は受験のメリットは大きいと思っています。
基本情報技術者試験の概要
基本情報技術者試験は、IT系で唯一の国家試験である情報処理技術者試験の1つです。ITに関する基礎知識に加えてアルゴリズムの基本やプログラミングも出題される、「情報処理技術者」が受験する最初の段階の試験区分です。
IPAの試験案内では略してFE(Fundamental Information Technology Engineer Examination)、ITエンジニアの登竜門として紹介されています。
令和元年度試験までは現在の高度情報技術者試験と同様に試験会場で実施でしたが、令和2年度からは情報セキュリティマネジメント試験と共にCBT試験に変更されています。試験スケジュールも以前の基本情報技術者試験から変更されているため、これから受験しようと考えている方は注意してください。
令和4年度の試験から受験料が変更されて7,500円になっています。
最初の段階の試験ですが、CBT以前の合格率は20%から30%と決してやさしい試験ではありません。CBT試験に変更されてからは合格率が50%弱と大幅に高くなっていますが、試験の難易度自体は変更なく、新型コロナウイルス感染症の影響で合格に不安な受験者が試験自体を受けていない事が原因と思われるため今後の合格率は以前に近くなると予想されています。
試験時間・合格水準
試験は午前試験・午後試験に分かれており試験時間はどちらも150分で、午前試験、午後試験ともに60%以上の正答率で合格になります。
CBT試験に変更されてから午前試験、午後試験を別の日に受験することも可能ですが、午前試験から先に受験する必要があります。また、受験できる日数は申込日から60日以内のため、日程を分ける場合はギリギリにならないように注意してください。
求められる人材像・スキル水準
1.対象者像
高度IT人材となるために必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた者2.業務と役割
基本戦略立案又はITソリューション・製品・サービスを実現する業務に従事し、上位者の指導の下に、次のいずれかの役割を果たす。3.期待する技術水準
https://www.jitec.ipa.go.jp/1_11seido/fe.html
1 情報技術を活用した戦略立案に関し、担当業務に応じて次の知識・技能が要求される。
・対象とする業種・業務に関する基本的な事項を理解し、担当業務に活用できる。
・上位者の指導の下に、情報戦略に関する予測・分析・評価ができる。
・上位者の指導の下に、提案活動に参加できる。
2 システムの設計・開発・運用に関し、担当業務に応じて次の知識・技能が要求される。
・情報技術全般に関する基本的な事項を理解し、担当業務に活用できる。
・上位者の指導の下に、システムの設計・開発・運用ができる。
・上位者の指導の下に、ソフトウェアを設計できる。
・上位者の方針を理解し、自らソフトウェアを開発できる。
人材像では「高度IT人材となるために必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力」、技術水準の多くは「上位者の指導の下」となっており、基本情報技術者試験では、基本的な知識と技術を上位者の指導に基づいて活用する能力が求められています。
あくまで情報処理技術者としての「基本」を問われる試験のため午前・午後試験とも解答は選択式になっています。
必要な勉強時間
IT経験者など、短い場合は50時間程度で十分学習できるようですが、未経験者では200時間程度は必要な場合が多いようです。とは言え、勉強時間には個人差が大きいためあくまで参考程度と思ってください。
私自身は、試験6カ月前から参考書の流し読み、試験2カ月前から本格的に午後試験の勉強を始めました。参考書の流し読みから含めると総勉強時間は300時間程度になりますが、集中して勉強した時間はもっと短いです。
午前試験対策
午前試験は全80問、分野別の内訳は基礎理論・技術的な知識を問われる「テクノロジ」系が50問(62.5%)、「マネジメント」系が10問「ストラテジ」系が20問と「テクノロジ」系の比率が高く、その分深い知識が問われます。
合格水準の60%(正答:48問)を超えるにはテクノロジ系の正答率を高くすることが必須のため、参考書で基礎知識を蓄えることが重要です。また、「マネジメント」「ストラテジ」系の学習も必要ですが、両分野ともに学習範囲が広い割には問題数が少なく、得意な領域に絞った学習よりは過去問題を繰り返して頻出問題に慣れる方が正答率を高くしやすいです。
お世話になった参考書・Webサイト
キタミ式イラストIT塾 基本情報技術者
情報処理技術者試験の定番参考書です。テクノロジ系の解説が多く、コンピュータの基礎理論から多くのページが使われています。
イラストも多いため、テクノロジ系が苦手な方でもとっつきやすさは1番です。この1冊でテクノロジ系は一通りカバーできますが、マネジメント系やストラテジ系はボリュームが少なく、試験範囲すべてを勉強するには他の参考書が必要になります。
よくわかるマスター 基本情報技術者試験対策テキスト
文字と説明が中心の参考書ですが、幅広い内容が書かれている参考書です。文字ばかりのため、内容の難しい範囲を読み進めるのに集中力を使います。私自身はキタミ式で一通り雰囲気をつかんだ後に読むと理解しやすかったです。
こちらもテクノロジ系が中心ですが、マネジメント系・ストラテジ系ともキタミ式よりボリュームが増えています。
基本情報技術者試験ドットコム
基本情報技術者試験を受ける場合にお世話になる事が多いサイトです。私も過去問道場や掲示板を使わせてもらいました。過去問道場は分野を絞った出題もできるため、マネジメント系やストラテジ系に絞った過去問で両分野の学習をしていました。
過去問道場だけでなく試験についても掲示板で相談できるため、不安を取り除くため掲示板にもお世話になりました。
学習のポイント
異分野・未経験の場合、2進数の計算など基礎理論が一番苦しい部分になると思います。しかも、大変な割に試験の出題数は少ないです。
正直、勉強を始めて間もない内は、苦手分野を読み飛ばして他の部分から始めた方が全体の学習効率は高くなります。時間に余裕があるうちは、得意な領域を確実に正解できるように学習を深める方向で進める方がいいと思っています。
ただ、基本情報技術者試験だけでなく他の試験も受験を考えている場合は基礎理論を避けて通ることはできません。また、計算問題は理解できると確実に解ける問題でもあるため、一通りの学習が終わった後はじっくりと取り組むと最後の数点Upに繋がります。
また、マネジメント系、ストラテジ系は正直すべての範囲の学習は膨大な量になります。基本情報技術者試験で求められる範囲は少ないため、過去問題の繰り返しで頻出問題と関連する知識を身に着ける方が学習効率は高くなります。
過去問題の繰り返しだけでも合格点は狙えますが、午後試験のためにも、午前試験は8割以上を理解して正答できるようになりましょう。
午後試験対策
情報処理技術者試験の関門は午後試験です。午前試験の知識をベースに応用力が問われるため格段に難易度は上がりますが、基本情報技術者試験は多肢選択問題のため選択肢の絞り込みができます。正答率を上げるためにも、まずは明らかに間違えている選択肢を素早く見極められるように学習します。
午後試験は大問11問中5問を選択して解答しますが、その内2問、「情報セキュリティ」「データ構造及びアルゴリズム」は必須問題になっています。また、1問はソフトウェア開発(プログラミング)から言語を選択のため、実質は「情報セキュリティ」「データ構造及びアルゴリズム」「ソフトウェア開発」の3問が必須(配点:合計70点)、残る4問中2問(配点:15点×2)が選択になります。
制度変更後の試験から選択問題の出題数がテクノロジ系3問、マネジメント系、ストラテジ系が合わせて1問のため、テクノロジ系が苦手な場合はかなり難易度が高い試験になっています。
学習のポイント
配点が大きく、異分野・未経験の場合に鬼門になる「データ構造・アルゴリズム」「ソフトウェア開発」は別にポイントを分けています。
すべての試験・分野に共通しますが、午後試験は参考書で知識のインプットだけで合格する事は難しいため、過去問題を繰り返して解くことが大切です。
やみくもに問題数を増やすだけでなく、間違えた問題については何故間違えたのかを理解するまで解説を読み込むことが重要になりますが、「この問題でやりたい処理」を理解することが早く正答にたどり着く道になります。
データ構造及びアルゴリズム
正直、合格はしたもののアルゴリズムはとても苦手です…。
疑似言語の読み方はソフトウェア開発でも必要になるため、まず疑似言語を正確に読めるように参考書を読み進めます。
正直、参考書の例題が解けるようになっただけでは試験問題は躓く事が多いため、例題を理解できるようになった後は過去問題に取り組みます。
例題、過去問題とも代表的なソート方法や検索方法が出題されることが多いため、ソート・検索の理論を午前問題の参考書で理解して必要な処理を辿ると解答しやすくなります。
ソフトウェア開発
ソフトウェア開発は何よりも自分が使い慣れているプログラミング言語を選択するのが一番ですが、今までプログラミング経験の無い場合は表計算かアセンブラを選択する事が多いです。
エクセルなどの表計算ソフトを使ったことのある方は、迷わず表計算の学習を始める方が効率は良くなると思います。アセンブラの方が覚える内容が少ないとはありますが、基礎理論をしっかり理解できていないと問題自体を読み解くことが難しいです。
ソフトウェア開発は別記事でまとめています。
午後試験全般
午前試験と違い、午後試験では得意な分野をのばすことを中心に勉強を進める方が正答率が高くなります。必須問題の中でも「情報セキュリティ」は全ての情報処理技術者試験で出題される事と、基礎理論が重要になる分野ではないため学習しやすい分野です。配点も20点と大きいため、情報セキュリティが得意分野になるように学習を進めると試験が有利になります。
情報セキュリティの学習方法は、時間の余裕もありますが「情報セキュリティマネジメント試験」の範囲を学習できていれば内容・範囲ともに十分です。もちろん、情報セキュリティマネジメント試験に合格している方はその分余裕が持てるようになります。
ですが、選択問題は特定の分野だけでは大問で出題されない可能性もあるため、選択問題はテクノロジ系の「ソフトウェア・ハードウェア」「データベース」「ネットワーク」「ソフトウェア設計」で複数の分野がある場合に限った方が無難です。
マネジメント系、ストラテジ系については得意分野であっても出題範囲がごく限られるため、苦手分野があるためにマネジメント系、ストラテジ系を選ぶのは避けて、本業などで全般的な知識や経験がある場合に選択する方が無難です。
この記事のまとめ
正直、異分野・未経験・独学で基本情報技術者試験を受けるのは大変でしたが、勉強した分得点として返ってきます。また、試験合格で客観的に知識と技術を証明できる事は大きな自信にもつながります。
もちろん、試験合格はあくまで基礎的な知識と技術の証明のため実際の業務経験とは異なる評価にはなりますが、今後の業務経験に活きてくる事は確実です。
基本情報技術者試験で基礎を身に着けた後は、さらに専門的な知識やスキルの習得でITエンジニアとしての道も開けると思っています。
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