ICT基礎知識:機器の構成ーハードウェアー

2024-01-15

用語の定義

ICT機器:パソコン、スマートフォン等のICTを利用するための機器
ICT:ICT機器に加えてインターネットなどの情報通信の利用も含めた環境

はじめに

現在では車の運転と同じように、スマートフォン(スマホ)やパソコン(PC)をはじめとするICT機器の成熟とインターネットの普及によって、ITに詳しくなくてもインターネットを利用した便利な生活ができるようになりました。

普通に使うだけで事足りる場合がほとんどですが、標準的な機能や公開されているアプリでは必要な要求を満たせない場合、個人や、ごく少人数が求めている機能などが必要になった場合などはどうでしょうか?

また、高校では「情報Ⅰ」が必須科目となり単純なICTの利用だけでなく上手に活用する能力が求められていますが、実際に活用するためにはプログラミング環境の構築など、ICTの基本的な理解は必要になります。

「ICT基礎知識」では、これまではICTを主に「使用」していた方が「上手に使いこなす(活用する)」ための基礎知識の説明をしています。その中で、このページではICT機器の構成として、PCを例にハードウェアの概要について説明しています。

教材の調達(できれば)

個人的な感覚にはなりますが、ハードウェアの構成一覧を見るだけでなく、実際にパソコンを開けてどのような部品が使われているかを「目で見る・実際にプラグやケーブルを繋ぐ」方が理解は早いと思っています。

こんな感じです(掃除していないので汚くてすいません)。

写真のPCはハードオフで2,000円で売っていました。

触りながらの学習はノートPCよりもデスクトップPCの方が便利ですが、その場合は本体以外にディスプレイ、キーボード、マウスは必要になります。

また、「ICT基礎知識」を一通り進めるにあたって自由に使える機材がある方が便利だとは思うため、最低限のスペックでいいので動作するPCを探してみる事も考えてみて下さい。

ハードウェアに必須の5装置(部品)と機能・役割

ハードウェアとは、ICT機器を人間の意図した通りに動作させるために必要となる物理的な機器(装置:部品)のことで、教科書的にはICT機器を使うためには以下の5装置(部品)が必須となります。

加えて、実際にPCやスマホのICT機器として完成させるためには、上の写真にもあるようにそれぞれの部品を接続して動作させるためのマザーボードや、機器を動かすために必要な電力を供給する電源ユニットなども必要です。

中央演算処理装置(CPU)

ICT機器の中心部とも言われるCPUには、演算装置と制御装置が含まれています。演算装置は、文字通り計算やデータ処理などの演算行う装置で、人間の意図した動作をするために必要なデータ、処理(プログラム)に基づいて各種の演算を行います。

制御装置は、ICT機器全体を統括し、求められた動作をするために必要な制御を行う装置です。

車に例えると、ブレーキ、アクセル、ハンドルが意図せず動くと車の機能(目的地に移動する)は満たせないことは簡単に理解できると思います。ICT機器も同様に、意図した動作結果を得るためには、それぞれの装置が必要なタイミングでのみ動作することが求められるため、演算装置だけでなく制御装置もCPUの重要な機能になります。

CPUの性能

CPUの性能を表現する代表的な指標は「ビット数」や「クロック周波数」、「Clock cycles Per Instruction(CPI)」、「Million Instrucutions Per Second(MIPS)」になります。

ビット数

ビット数は、16bit、32bit、64bitで表現される、CPUが一度に処理できる情報量で、ビット数が大きくなるほど処理できる情報量も大きくなります。

現在のPCは64bit CPUが一般的に使われていますが、IoT機器や古いPCでは8bit CPUや16bit CPUや使われている場合もあります。

クロック周波数

クロックとはCPUが発信できる周期信号のことで、CPUの演算装置、制御装置ともに信号のタイミング(サイクル)に応じて処理を行います。

クロック周波数は1秒間にCPUが発信できる周期信号の数になり、クロック周波数が高い(大きい)ほど1秒間の間にCPUが処理を行うサイクルが増えるため、CPUの性能は高くなります。

CPI

CPIは、上記のクロック周波数と合わせた理解が必要になりますが、CPUが1命令を処理するにあたって平均して何サイクルが必要になるかを表しています。

例えば、クロック周波数同じ1GHzのCPUが2種類あった場合でも、CPIが1サイクルのCPUと2サイクルのCPUでは、CPUが処理できる命令数は2倍の差が出てきます(実際のCPUではそんなに大きな差はありません)。

MIPS

MIPSは1秒間に実行できる命令の数(100万単位)となり、例えば、クロック周波数が1GHz、CPIが1サイクルのCPUは1秒間に1,000,000,000回の命令を実行できるため、1,000MIPSとなります。

同様に、クロック周波数が3GHz、CPIが1.5サイクルのCPUでは1秒間に2,000,000,000回の命令を実行できるため2,000MIPSになります。

参考リンク

主記憶装置(メモリ)

主記憶装置はCPUから直接アクセスできる記憶装置のことで、一般的にはメインメモリのことを指します。

CPUは与えられたデータを使って演算(計算)を実行しますが、演算に必要なデータはメモリに記憶されているため、必要に応じてCPUはメモリに入力された値を書き換えていきます。

メモリの種類

メモリには、製造過程で書き込まれた後はデータの書き換えが不可能なROM(Read Only Memory)と、メインメモリにも使われている、何度でも書き換えが可能なRAM(Random Access Memory)の2種類があります。

大きな違いは、ROMに書き込まれたデータは電源を切っても消えることはありませんが、RAMはデータの保持に電力が必要になるため、電源を切ると記録されたデータは消えてしまいます。

また、RAMでは使われる素材の違いで、フリップフロップ回路を使ったSRAMと、コンデンサで作られているDRAM(SDRAM・DDRAM)があります。

SRAMは動作も高速で低い電圧でも動作しますが高価なため、限られた容量で効果が大きいキャッシュメモリに使用されています。反対に、DRAMはSRAMに比べると低速ですが安価なため、容量が必要なメインメモリに使われています。

参考リンク

補助記憶装置(外部記憶装置)

演算に使うデータは主記憶装置に保存して利用されますが、メインメモリはRAMで構成されているため電源が切れるとデータが消失してしまいます。

そのため、電源が切れてもデータが消失せず、かつ、自由に読み書きが可能な記憶装置として補助記憶装置が利用されます。

ごく基本的な構成のICT機器では補助記憶装置は必ずしも必要ではありませんが、現在では基本ソフトウェア(オペレーティングシステム:OS)を使いことが多いため、容量の大きなプログラムを保存するために補助記憶装置も必要な機器が大部分を占めています。

代表的な補助記憶装置としてはハードディスク(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、DVD-ROMやCD-RPM、USBフラッシュメモリ等があります。

補助記憶装置の主な役割は、主記憶装置だけでは一度に記録できないサイズのデータの保存や、長期間にわたるデータの保存になります。

入力装置

キーボードやマウス、スマホでは画面(タッチパネル)が一般的に広く使われている入力装置にあたります。

入力装置は、ICT機器へ動作・作業を指示することが主な役割です。

素晴らしい性能のCPUやメモリを持つICT機器があっても人間の意図する動作や作業が行えないのでは意味が無いため、入力装置も必須の部品に入ります。

出力装置

ディスプレイやプリンター、スピーカーなど、ICT機器の動作状況・結果を人間に伝えるための部品を出力装置になります。

入力装置同様、ICT機器が意図した通りに動作することが確認できなければ人間の意図の下に使うことはできないため、出力装置も必須のハードウェアになります。

配線をつなぐ(できれば)

家電製品の接続などで経験があれば特に必要は無いと思いますが、今まで一度も触ったことが無い場合は、機器に慣れるためにも自分で動作するように配線をつないでみる方がいいと思います。

難しいことは何もありませんし、トラブル時の対処や新しい機器の接続時にも必要になる事が多いです。小学生の体験学習の際は、子ども達は喜んで繋いでいました。

そして、スピーカーとマイクの端子を間違えて、音が出ないパターンが多かったです。

デジタルデータと電気信号

ICTで使われる情報はデジタルデータで、「デジタル」とは連続的なデータを段階的に区切ることです。

例えば下のグラフでは緑の曲線のように連続した数値がありますが、そのままではICT機器では取り扱うことができません。そのため、オレンジの棒グラフのように段階的に区切ることで(符号化)、ICT機器で取り扱うことのできるデジタルデータに変換します。

ICT機器では電気信号のOn/Offや磁力の方向(S/N)などの2つの数値で表現される2進数を使い、一度に取り扱う2進数の桁数をビット数と言います。

1ビットの2進数は0と1しか表現できませんが、8ビットの2進数は0から255までを表現する事ができます。

センサーとA/D変換

ICT機器の性能向上に加えてIoT機器の普及もあり、多くの情報を集めて取り扱うことができるようになった結果、新たな産業やイノベーションの創造が求められています。

そのため、今までは収集されていなかったデータもICT機器で取り扱う機会も増えていますが、上述したように現実のデータ(アナログデータ)をICT機器で取り扱うデジタルデータに変換する符号化、A/D変換(Analog/Digital変換)が必要になります。また、A/D変換にはアナログデータを収集するためのセンサーが必要になります。

まとめ

ごく簡単な説明だけですが、ICT機器のハードウェアの機能について説明しました。

普段、意識せずに使えることが当たり前になっているPCやスマホですが、機械の内部がどのような役割や機能を持って動作しているかを知っておくことは、複雑な動作を実行するためには必要な知識になります。

また個人的な意見ですが、最近は購入して電源を入れると、WiFiのパスワードを入力するだけですぐに利用できるICT機器も多く、便利ではありますが機器や仕組みを考える機会は少なくなっています。

使いこなすためには、面倒や手間をかけても1から仕組みを理解する事が早道になることも多いと思っているので、改めて手を動かしながらハードウェアの動作を理解することも大事だと思っています。

参考サイト